5月の新刊
5月新刊の新書・文庫・選書から気になる本をピックアップしました。
◎岩波新書「室町幕府と地方の社会〈シリーズ日本中世史 3〉」榎原雅治
鎌倉や戦国に比べると室町時代のイメージってピンと来ていません。さて本書はどうでしょうか。
我が家の本棚では「室町の王権」「中世的世界とは何だろうか
」あたりと絡むのでしょうか。
◎岩波新書「中国近代の思想文化史」坂元ひろ子
清末についてまっとうに評価する著作が最近出てきているように思います。
うちのでは「清朝と近代世界」なんかがそうです。
他に関連しそうなのは「仁学」(本書の著者が共訳者でした)「世紀末中国のかわら版
」でしょうか。
◎講談社現代新書「「日本人の神」入門 神道の歴史を読み解く」島田裕巳
島田さんがどういう方向で論じているのかわかりませんが、
「神道の成立」「神仏習合
」「神々の明治維新
」あたりを手際よくまとめているのでしょうか。
◎ちくま新書「昭和史」古川隆久
昭和の後ろ半分を生きて来た者にとっては、産まれる以前の半分が気になるところですが、私が良く知っているはずの30年代以降も歴史なんですね。
◎ちくま新書「鴨長明: 自由のこころ」鈴木貞美
鴨長明はもとより「方丈記」についても関連書はまったく手元にありませんでした。
◎新潮新書「格差と序列の日本史」山本博文
日本史入門書を多作している方ですが、タイトルでは内容がつかめませんね。
◎集英社新書「ルバイヤートの謎 ペルシア詩が誘う考古の世界」金子民雄
金子氏の著作では「西域 探検の世紀」を持っています。
岩波文庫「ルバイヤート」はありますが謎ってなんでしょう。
◎文春新書「不平等との闘い ルソーからピケティまで」稲葉振一郎
稲葉氏の著作では「「資本」論」を持っています。
ルソーからというのですから「人間不平等起原論」から始まるのでしょう。
◎文庫クセジュ「古代ローマの女性たち」ギイ・アシャール
古代の女性史としては「古代ギリシアの女たち」なんてのはあります。
◎岩波現代文庫「南部百姓命助の生涯―幕末一揆と民衆世界」深谷克己
幕末の激動を東北農民からとらえ返すという西南雄藩史観への挑戦なのかもしれません。
うちの蔵書では「「おかげまいり」と「ええじゃないか」」「一揆
」あたりが絡みそうです。
◎ちくま学芸文庫「大乗とは何か」三枝充悳
大乗仏教なら「「覚り」と「空」」でいいでしょう。
◎講談社学術文庫「興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和」林 佳世子
オスマンも面白いですね。我が家では鈴木董氏の「オスマン帝国」がそのものずばりです。
◎講談社学術文庫「交易する人間(ホモ・コムニカンス) 贈与と交換の人間学」今村仁司
今村氏の著作は共著・訳書を含めるとかなり読んでいます。
本書に近いのでは、「作ると考える」「貨幣とは何だろうか
」あたりでしょうか。
◎角川ソフィア文庫「哲学は資本主義を変えられるか ヘーゲル哲学再考」竹田青嗣
竹田氏の著作には現代思想関連でずいぶんお世話になりました。
現象学の人というイメージなのですがヘーゲルで大丈夫でしょうか。
◎文春文庫「血盟団事件」中島岳志
戦前右翼ですね。その程度の関心です。
◎光文社古典新訳文庫「寛容論」ヴォルテール
啓蒙思想の代表ヴォルテールは、4冊手元にあります。
岩波「カンディード」のほかには「浮世のすがた―他六篇
」「バビロンの王女・アマベッドの手紙
」「世界の名著
」。
◎ハヤカワ文庫NF「国家はなぜ衰退するのか(上)(下):権力・繁栄・貧困の起源
」ダロン・アセモグル/著 ジェイムズ・A・ロビンソン/著 鬼澤 忍/訳
面白いかもしれませんがアメリカの学者っぽい大風呂敷という気がします。
◎講談社選書メチエ「来たるべき内部観測 一人称の時間から生命の歴史へ」松野孝一郎
なかなか難しそうなテーマです。
うちの書棚のでは「時間」「知性はどこに生まれるか
」「哲学の現在
」あたりに絡んでるのでしょうか。たぶん読んでも理解できない気がしますけど、気になる本です。
◎講談社選書メチエ「熊楠の星の時間」中沢新一
中沢さんも何冊か付き合っていますが、いつも論理についていけず思いつきにつき合わされている徒労感があります。
◎新潮選書「日本語の謎を解く: 最新言語学Q&A」橋本陽介
面白いに決まってい内容ですが、あとは著者の筆力にかかっています。
◎吉川弘文館歴史文化ライブラリー「化粧の日本史: 美意識の移りかわり」山村博美
もしかすると面白くなりそうなタイトルです。
ただこのシリーズだと事実の羅列に終わりそうな予感も。
◎吉川弘文館歴史文化ライブラリー「自由主義は戦争を止められるのか: 芦田均・清沢洌・石橋湛山」上田美和
日本の近現代史は身近すぎるせいかとても嫌な気分になってしまうのであまり読んでいません。
今月の目玉は、
新書では「室町幕府と地方の社会」「ルバイヤートの謎」「不平等との闘い」あたり。
これぞというほどではありませんが、いろんなジャンルで興味深いのがそろっています。
文庫は、「南部百姓命助の生涯」と今村氏の「交易する人間」かな。
選書は今月は不作でした。まだ見落としがあるかもしれません。
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