3月の新刊
3月新刊から気になる新書・文庫・選書を私の蔵書と関連させてご紹介します。
今月はやや遅れたので中公新書も一緒に紹介できます。
◎岩波新書「天下泰平の時代〈シリーズ 日本近世史 3〉」高埜利彦
江戸時代の最盛期、4代家綱から、綱吉、吉宗を経て家治までを描く。
我が家の蔵書では時代的には「将軍と側用人の政治」がいちばんぴったりしているのでしょうか。
「生類をめぐる政治」や「流通列島の誕生
」も関連します。
◎岩波新書「アホウドリを追った日本人―一攫千金の夢と南洋進出」平岡昭利
戦前の南洋について少しでも触れているのでは
「大東亜科学綺譚」や「「大東亜民俗学」の虚実
」、そして「偽史冒険世界
」といささか際物的な扱いが多い気がします。
◎岩波ジュニア新書「自分で考える勇気――カント哲学入門」御子柴善之
カントの著書でうちにあるのは「道徳形而上学原論」「永遠平和のために
」。
入門書では「カント入門」「カントの人間学
」あたりです。
あんまり親しみのわく思想家ではありませんけどね。
◎中公新書「鉄道技術の日本史 - SLから、電車、超伝導リニアまで」小島英俊
鉄道好きなら読んでみたい1冊です。
◎中公新書「朝鮮王公族―帝国日本の準皇族」新城道彦
関連があるのは「韓国併合」です。
◎中公新書「山岳信仰 - 日本文化の根底を探る」鈴木正祟
山岳信仰は日本の宗教の大きな特色といっていいでしょう。
私の通っていた大学でも飯豊山、岩木山、恐山などの調査に行っていたようでした。
手元にあるものでは事典的なものを除けば「日本のシャーマニズム」「死の国・熊野
」「江戸のはやり神
」「仏教民俗学
」あたりに載っています。
またマイナーな専門誌ですが「現代宗教〈2〉」の特集が山岳宗教でした。
◎講談社ブルーバックス「サイエンス異人伝 科学が残した「夢の痕跡」」荒俣 宏
同じ著者の「パラノイア創造史」は近い線かもしれません。
◎平凡社新書「経済学からなにを学ぶか: その500年の歩み」伊藤 誠
うちにある経済学史なら「経済学の考え方」あたりでしょうか。
◎白水社Uブックス「裏面: ある幻想的な物語」アルフレート・クビーン
幻想画家クビーンによるアンチ・ユートピア小説。
本書は1971年河出書房新社版のペーパーバックス版。
85年に法政大学出版局から「対極―デーモンの幻想」というタイトルでも訳が出ています。
◎白水社文庫クセジュ「宗教哲学」ジャン・グロンダン
古代から現代までの哲学と宗教の関係を探る通史らしい。
宗教学をかじっていたのでシュライエルマッヘルとかオットー
とかそこそこ読みましたが、抽象的な論議にはあまり興味をもてませんでした。波多野精一の「宗教哲学
」なんてチンプンカンプンです。
理性による信仰=自然宗教については「理性と信仰」があります。
◎岩波現代文庫「家事の政治学」柏木 博
家事についての社会史なら「路地裏の大英帝国」があり、社会学なら「資本制と家事労働
」や「シャドウ・ワーク
」。
政治学とはなんだろう。
◎岩波現代文庫「ファンタジーと言葉」アーシュラ・K・ル=グゥイン
「闇の左手」や「ゲド戦記
」のル=グゥインによるファンタジー論。
◎ちくま学芸文庫「科学哲学への招待」野家啓一
科学哲学についてはどういうものなのか分かっていません。
◎ちくま学芸文庫「知性の正しい導き方」ジョン・ロック
ロックなら「市民政府論」があります。
彼の思想については「十八世紀イギリス思想史」が詳しい気がします。
◎ちくま学芸文庫「日本の哲学をよむ: 「無」の思想の系譜」田中久文
西田幾多郎・田辺元・和辻哲郎・九鬼周造・三木清。うーん…難しい。
◎ちくま学芸文庫「われわれの戦争責任について」カール・ヤスパース
若いころ実存主義に親しんでいたので名前だけはよく聞くんですが、読んだのは「カール・ヤスパース―人とその思想」ぐらいで、本人の著作は無縁です。上の西田さんや和辻さんにこそ読んでほしいタイトルです。
◎講談社学術文庫「日本仏教 思想のあゆみ」竹村牧男
日本仏教の通史で持っているのは「日本仏教史入門」「日本仏教のこころ―入門日本仏教思想史
」。どっちも圓澄さんです。
◎講談社学術文庫「伊藤博文 近代日本を創った男」伊藤之雄
伊藤博文についての本はありませんが、「明治六年政変」「天皇と日本の近代
」で登場します。
◎講談社学術文庫「ヒトはいかにして生まれたか 遺伝と進化の人類学」尾本恵市
この手の本は大好きです。
◎河出文庫「日本人の死生観: 蛇 転生する祖先神」吉野裕子
著者のものでは「ダルマの民俗学」「神々の誕生
」の2冊が手元にあります。
日本における蛇信仰については「卑弥呼―朱と蛇神をめぐる古代日本人たち」「神々の変貌
」「蛇と十字架
」あたりでいかがでしょうか。
◎講談社選書メチエ「「社会」のない国、日本 ドレフュス事件・大逆事件と荷風の悲嘆」菊谷和宏
ドレフェス事件については「ファシスト群像」に触れていますが、大逆事件については持っていません。
たぶん、そういう事件の問題でなく社会があるかないかという根源的な話のようです。
おぼろげながら分かる気がしますが、問題の立て方としていささか性急すぎるような。
◎講談社選書メチエ「女たちの平安宮廷 『栄花物語』によむ権力と性」木村朗子
平安時代の女性について書かれているのは「平安朝の母と子」ぐらいかな。
◎角川選書「霊性の哲学」若松英輔
鈴木大拙、柳宗悦などの宗教、哲学者の言葉から、近代日本霊性史を探る…、か。
多分、読まないなこの内容は。
◎中公選書「クーデターの技術」クルツィオ・マラパルテ
クーデターの実際は「フランス革命史」「ヒトラー 独裁への道
」あたりに触れています。
◎吉川弘文館歴史文化ライブラリー「馬と人の江戸時代」兼平賢治
「日本史再発見」に乗り物の話がちょっと出てくるぐらいです。あとは生類憐みの令関連か身分制関連でしょうか。
今月の目玉は何といっても「裏面」。オリジナルを古書店で買おうと思っていたぐらいですから当然即ゲットです。
新書は宗教学関係の2冊「山岳信仰」「宗教哲学」にひかれてしまいます。
文庫は「家事の政治学」「日本人の死生観」。
選書はイマイチかなあ。
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